Rock you!







「具合悪ぃんだったら、とっとと帰れ、
「日番谷隊長・・・」


いつものように素っ気なく隊長は言った。


「お前、大丈夫か」
「いやあ、そんなによくはないですね」


しれっと言ってみせると、彼は今にもつばでも吐き出すような顔をした。ひどい。


「風邪か」
「おそらく」


はあ、とため息をつく。ちっこい風貌に似合わない表情。


「ほら、行くぞ」
「仕事いいんですか」
「十番隊の人間を気遣うのが仕事だ」
「デスクワークから離れる口実じゃないですか」


ふん、と笑った。歳相応のかわいらしさというものがまるでない。とっても辛いんだけど、ちっこくて、かわいげのない彼にもたれるわけにもいかず、わたしはずりずりと、あるいはのっそのっそと医務室をめざした。隊長と2人で。




病人相手に歩調を合わせることなく、小さなコンパスがせかせかと動く。今さらにわたしはお腹を抱えて、前かがみにさらにスピードを落として進む。


「そんなに重症なら、医務室で気の済むまで寝とけ」
「うわ、隊長、はじめからねらってましたね」


彼が一瞬振り向いていたずらが成功したみたいに笑ってるように見えたけど、わたしの記憶はそこでいったん途絶えている。幻想だったのだ、きっと。そうでなければ、あのちびっこが笑うはずなんてないから。かわいくねー。






「おい、

はじめのうちは何かの冗談だと思っていたが、ぴったりと合わさったまぶたは開く気配がない。
いつも軽口ばかり叩いていて、煮ても焼いても食えないやつだと思っていたが、たかが風邪でこうも簡単に倒れるとは思わなかった。そういえば顔色がすぐれない。

何が、「十番隊の人間を気遣うのが仕事だ」だ。現にはこうして倒れてしまっている。
ぐったりと壁にもたれるようにして気を失っているに、そっと近づいてみた。起きる気配は、ない。の脇の下に自分の腕を通してひきずるように医務室を目指す。世話のかかる部下だ、と思った。

しかし、このまぬけな部下の世話はどうにも力が抜ける。おもに、眉間や肩の。






次に目を開いたときには、わたしは医務室にいて、そこには日番谷隊長もちょこんといた。彼はデスクワークから逃れられたのに、なぜだかうれしい素振りなど見せないで、結局いつもの仏頂面をしていた。

上体を起こすと、額から濡れタオルが落ちて、彼がこれを用意してる姿を想像したら、ちょっと笑えた。ぷっ。そちらを向くと視線をそらされた。なんかかわいい。