14.君とならばどこまでも





駆け足でいろいろなことが起こった。わたしもギルベルトも、ずっと戦いの中に身を置いていた。絶望的な状況は何度もあったし、敗れても何度も立ち上がった。鮮やかな勝利を収めることもあった。
洗練されていく戦う力。規律を重んじながらも、その範囲内であれば自由の許される先進的な組織体制。無敵を謳うわけではないが、わたし達の築いてきたものに誇りを感じていた。



ギルベルトは相変わらずで、それでも1つだけ大きく変わったことがあった。彼に弟ができた。

「おい、

夏の日差しがじりじりと肌の上で踊るようにはじけるなか黙々と作業をするわたしに向かって、ギルベルトが駆け寄ってくる。顔がほころんでいるから、きっとまた弟の話をするのだろうと思った。

「聞いてくれよ。ルツのやつ、昨日俺が帰ったら晩飯作ってくれてたんだぜ! まじ愛くるしいよな!」
「よかったね。何食べたの?」
「ん、いもをふかしたやつとか」
「やけどとか大丈夫だった?」
「あいつ、最近は結構元気なんだぜ。もうかわいくてしょうがねぇよ、流石は俺様の弟だぜ!」
「そっか。よかったね」
「おう」

にかっと歯を見せてギルベルトが笑う。わたしも同じように目を細めて笑う。
ギルベルトは誰彼かまわず「かわいい弟」自慢をしている。そんな彼の弟も、はじめのうちは衰弱しきっていたというから、元気な様子を知ることができて安心した。まだ家の外に出すのは心配らしく一度も会ったことはないけれど、もっと元気になったらそのうち会わせてくれるとギルベルトが言っているから気長に待とうと思った。

言いたいことを言ってすっきりした様子で、ギルベルトは再び庁舎へと戻っていった。










ギルベルトのとなりで馬鹿みたいにずっと笑っていたかったけれど、わたしはあまりにもどろどろとしたものにまみれていて、それが彼に伝染してしまうようで、触れるほど近くにいることにためらいを感じていた。


そんなぎこちないながらも穏やかと言えなくもない日々を、いつだって大きく変えるのは、わたしでも彼でもこの国でもなく、他国だった。
わたしの元に話が下りてくる頃には、もうわたしにはどうすることもできない事態になっているので、その話を聞いたとき、わたしはさして信じてもいない「運命」だとかそういう言葉で、自分の気持ちを片付けようとした。でも、きっと心のどこかではその言葉を信じていたのかもしれない。

いまのわたしをどうにかできるとすれば、生まれたその地に他ならないのだろうから。




ギルベルトのお供として、遠く離れた島国へと赴くことになった。