Pal.





あちいあちいと繰り返しながら、彼はわたしの部屋へ避難してくる。こちらに向かって投げられたビニールの袋ががさりとベッドへダイブする。中から、とても2人で食べきれないような数のアイスが顔をだす。


多くない、とたずねると、大丈夫、と彼は笑ってさっそくアイスの封を切った。







あちい、と何度目かわからないつぶやきがディアッカの口からこぼれた。アイスを口にくわえたまま、Tシャツの襟口の部分をつかんでぱたぱたと風を送っている。クーラーの設定温度を確認すると、28度、環境にやさしいわたしししてみれば、まあ普通だ。そのままクーラーのリモコンをテーブルに置いて、コンビニの袋からカップアイスを1つ取り出した。ディアッカはなれた手つきでテレビのチャンネルを回している。




ディアッカはたぶんわたしのことがすきなんだと思う。うぬぼれてるわけじゃないけど、そう思う。でもどうしていいかわからない。


彼にはいわゆるガールフレンドがいるわけだけど、こうしてわたしの家で2人で会うことだってある。彼女どう、って聞くと、メールうざい、なんてひどいことを言ったときもあった。あれは前の前の彼女のときだ。(ディアッカはなぜだか女の子に人気がある)


義務教育後の進路選択のとき、わたしは特殊技能を学ぶ学校を選んだ。そのときディアッカが言った。オレもまわりが軍人になれなんて言わなきゃその学校に行ったのにな、って。わたしはどうしていいかわからなかった。








実際、今だってよくわからない関係がつづいている。わたしのアドレスブックにある男性のメモリなんて父とディアッカだけだし、彼女でもないのにこうして会ったりするし。


告白はされたことがないけれど、それに近いものは言われたことがある。それともそれはわたしの勘違いなのだろうか。とりあえず、気がつかない風を装っているわたしはとんでもなくずるい、ということははっきりわかる。





「あ、そのアイス」
「えうそ、ごめん、ひょっとしてねらってたの」
「いいよ、ほかのもあるし」





こうして彼のやさしさに甘えている。わたしはずるい女友達だ。