低音の指先









腹黒だ鬼畜だと仲間からさえも非難を浴びることのあるジェイドの考えを(笑顔に隠されている毒だとか、不器用なやさしさのようなものだとかを)理解できるのは、自分も同じような感覚を持っているからなのだろう。年齢を感じさせない横顔を盗み見ながら、ガイは考えていた。

ときに傲慢に自他を傷つけ、愛を求めてやまない自我が胸の奥で小さくうずいているのだ、自分も、ジェイドも。思わず苦笑する。寂しいくせに、プライドが高いせいでそれを悟られたくないと思ってしまう。また寂しくても自分は平気だと、いつのまにか錯覚しているのだろう。これは、自分が第三者の立場になって、はじめてわかったことだが。



二人きりで話す機会があったので、すこしきつく問い詰めてみると、ジェイドはばつの悪そうな表情を垣間見せて、すばやくその場を離れようとした。逃げるなんてジェイドらしくない、とその一瞬の間にこっそり思っていたものだ。

逃がすものかと、ガイはジェイドの手を瞬きの速さでとらえた。つかんだ手がぞっとするほど冷たくて、ネクロマンサーと呼ばれる彼こそが死人ではないかと思うほどだった。相手も驚いたように、つながった手と、ガイの顔を交互に見渡して言葉をさがしていた。