まぶたの裏には陽だまり












無理なことを言っているのは自分でもわかっていたし、彼に無理をさせてしまうこともわかっていた。それでもわたしは試しかたっかのだろう。彼の愛を信じていなかったわけではないのだ。




「目、つむってるから」





後ろで手を組んで、わたしはすました顔をしているだろう。じぶんのできる限りのかわいい顔で、彼を、きたるべき未来を待つ。








あ。








地面に彼が倒れた音で、思わず目を開けた。彼は肩で息をしながら、両手足を使ってどうにか体勢を保っていた。やっぱり無理させてしまった。


「ごめん・・・」





本当に悪いと彼は詫びたけど、別にわたしは悲しくもないし怒ってもいない。むしろ悪いのは彼ではなくてわたしなのに、本当に人が好いなあとちょっとわたしの脳はとろけた。




あ、だめだ。やっぱり口がゆるむ。




にやけるわたしを見てガイは、「やっぱり情けないよな」と自分を皮肉って笑ってみせたが、わたしが笑っているのはべつの理由だ。あわてて「違う」と彼に言って、わたしはしあわせを噛み締めるかのように彼に告げる。





「ふふ、いつもより近くでガイのにおいがしたの。太陽にあたって香る草原みたいな、いいにおい」





無理させてごめんね、しゃがみこんで視線を四つんばいの彼と合わせる。










(ああ。試したかったのは、わたしが彼をちゃんと愛してるかってことだったんだなあ)