01 覚悟は出来ているか


ずらりと見慣れない顔が立ち並ぶさまは、露店で魚や野菜が並べて売られているそれと変わらないように張遼は思っていた。代わり映えがしないのだ。
じゃがいもの集団もとい、新たに補充された張遼軍の新兵たちを一通り眺めた。腕に自慢のありそうな豪傑から、徴兵令によって仕方なく集められたような数合わせの青年。ものになるやつが何人いるか、と値踏みするようにそれらを見やった。

不思議なことに目を引くやつが何人かいるものだ。露店でも、直感で「この品物がいい」などと思うようなあれが、ここでも起こる。そして張遼は、その直感を信じていたし、わりと当たると自負していた。



獣の目をした女がいる、と思った。



静かで、この場所に似つかわしくないまだ若い女だった。得物であろう短戈をわきに抱え、彼女はひたすらに前を見据えていた。


集団で群れるような雑魚や、自慢げな顔で並ぶ豪傑かぶれよりも、彼女からは戦うものの雰囲気が出ていた。正直、この度の新人たちにあまり期待はしていなかった張遼だが、その考えは改めさせられた。彼女がどのようにして戦うのか、今から楽しみだった。年甲斐もなくわくわくしている。

そっと、背後にひかえる己の副官に彼女のことをたずねた。


「磨けば光りますよ、彼女は」



軍入試験に立ち会った副官は、笑っていった。自分の戦を知る彼をもってしてそう言わせるとは、ますます楽しみなことだ。






戦の前に、あの獣の目をした女に声をかけよう。誇りを説いて、その覚悟を問おう。