時には花のように ;;




よく見るとまるくて黒い瞳は、一度目が合うと吸い込む力でもあるのだろうか、と思うほどだ。
うかがうようにこちらを見ている。
そして自分は、それから目が離せないでいる。

「どうしたの、陸遜?」
「ありきたりな話すぎてつまらないなと思ったんです」



ありきたりすぎる。
今までのことを女性として見たことなど一度もなかったのに。
武将顔負けに戦野を駆けるし、笑い方は「がはは」だし、他の男に混じって床に雑魚寝してるし。

それなのに、多少着飾っているだけで、こんなに意識してしまう自分の人間としての小ささにいらだった。
普段とのギャップに、自分はこんなにも心を乱している。



「抱きしめて、口づけたいでしょ?」

挑発的な言い方には否定も肯定もしない。
が不敵に笑んで言ってのけるが、細められた瞳と釣り上がる唇に脳の回転数は次第に落ちていく。
宴の席につきものの酒のせいでもある。
己の理性との戦いに必死だが、どうにも眼前のはそれを高みの見物でもしているようだった。
の思い通りというのも気に食わない。








「・・・頬、あついね?」

いつもよりかすれたの声。
柔らかな髪が触れるくらいの位置で向かい合う。白い指が熱で赤くなっている陸遜の頬をなぞる。


「どこで覚えたんですか、こんなこと」
「もともとですよ。能ある鷹は頭かくして尻隠さず」
「あ、口は開かない方が賢明ですよ。知性のなさが露呈します」
「無粋なことを言うのはこのお口かしら」

唇の輪郭を滑らかになぞられると、ぞわりと体内を何かがかけめぐる。